セレスと豊受姫


今年は連休が多くて、月曜日が振替休日になっていることも多いですが、私は月曜だけ大学に行っているので、授業日数が少なくてちょっと悲しいです。

休講なんかも、学生は嬉しいかもしれないけれど、勉強したくて行っている場合、とてもがっかりします。
仕方なく大学の図書館で時間を潰すことになるのですが、歴史とか神話に関する面白そうな本が沢山あって、あっという間に時間が過ぎます。
レジュメを棒読みするだけのような、つまらない授業に出るのなら、図書室に行って勉強している方が良いかもしれません。

小さい頃は、今では考えられないくらい本が好きで、図書館で沢山本を借りていました。
たまに誕生日など、本を買ってもらえる事があったのですが、その中に、野尻抱影の「星と神話」という、子供向けの星にまつわる神話の本があります。
特に星に興味があったわけではなかったのですが、今思うと、やっぱり、何か縁があったんだな、という気がします。

その中でも特に印象的だったのは、ペルセフォネーとデメテルの神話です。
デメテルは大地の女神で、その娘のペルセフォネーは、ある日、冥界の神ハデスにさらわれ、妻にされてしまいます。

嘆き悲しんだデメテルはなにも口にせず、洞窟に閉じこもってしまったため、世界に春がやってこなくなり、一年中冬のような荒れ果てた状態になってしまいます。

しかし、このままでは世界がだめになるというゼウスの計らいで、ペルセフォネーは半年の間は地上の世界に戻り母と暮らし(春夏)、残りの半年(秋冬)は冥界で過ごすことになります。
これが四季の始まり、というお話なのですが、この神話は、日本の天岩戸神話と重なります。

オルフェウス神話と同様に、天岩戸から出てきた天照の神話はギリシャ神話のデメテルの逸話をなぞったものであると考えられます。

日本神話では、天岩戸の前で、アメノウズメが下半身を丸出しにして踊り、神々の笑い声で天照が顔を出すのはおなじみですが、
実は、デメテルにも、下女のバルボが下半身を丸出しにしたのを見て思わず笑ってしまい、やっと食べ物を口にするようになったという話があります。

天岩戸についてですが、天照は卑弥呼で、亡くなったのがちょうど日食で真っ暗になった日であり、天岩戸神話は、天照が消え、再び天岩戸から出てきたのは次に擁立された台与(とよ)つまり豊受姫を表しているという説があります。

デメテルは、おとめ座を象徴する女神で、豊かな生育を象徴し、人々に恵みをもたらします
。天体では、セレスという小惑星に当てはめられています。穀物、農業、育成に関する天体です。

豊受姫も、穀物、稲作を象徴する神様です。

占星術で、おとめ座は農業などにおいては不毛の星座ですが、娘を失って引きこもったデメテルは穀物を枯らすし、同様に、引きこもった天照にも通じます。
また、娘が戻ってくる時期の、恵みをもたらすデメテルと、豊受姫は、まさに同じ意味を与えられている事がわかります。

ちなみに、デメテルは、羽根が生えていて、麦の穂を持っている姿で描かれます。
豊受姫は羽衣をもち、稲作の神です。なんとなく共通性が感じられます。

デメテルを象徴する小惑星セレスは、昔火星と木星の間にあった惑星が爆発して分割された中の一番大きい小惑星なのですが、まるで天岩戸から出てきた様子を表しているようで面白いです。

ちなみに、女性の下半身露出によって笑いが生じるという事が意味するのは、裂けたものを見て口を裂くという事、つまり、花が咲くのもそうですが、サク、サケル事による受容性の神秘を表していると考えられます。
同じ響きを持つ、酒、坂、桜も、語源にそのような神聖な意味があると言われています。
※桜については、サ(田の神)のクラ(座)という説と、サク(咲く)ラ(もの)という説があります。